July 8, 2025

2025–2027年で何が変わる?ビッグ・ビューティフル・ビル法案が日本の越境ECに与える影響とは

 2025年7月4日、トランプ大統領は「One Big Beautiful Bill(ビッグ・ビューティフル・ビル法案)」に署名し、米国の関税・税制政策は大きな転換点を迎えました。特に注目すべきは「de minimis制度」の段階的撤廃。これにより、800ドル以下の小型商品であっても、将来的には課税対象となることが確定しました。本稿では、日本のEC事業者・輸出業者の目線から、この法案の具体的影響と取るべき対策を詳しく解説します。

 

ビッグ・ビューティフル・ビル法案のスケジュールとde minimisの変更

  • 2025年8月2日:de minimis制度の乱用に対し、初回5,000ドル、再犯で10,000ドルの罰金規定が発効。

  • 2027年7月1日:1321(a)(2)(C)条項の削除が発効し、800ドル免税制度が完全撤廃へ。

この2年間は移行期間とされ、米国への輸出企業にとっては、事業モデルの見直し・現地体制の強化が求められる重要フェーズとなります。

 

日本の越境EC業者が直面するリスク

  1. 税金・関税コストの上昇: 商品ごとにHTSコード(輸入分類コード)に基づき関税が課され、電子製品やアパレル製品などは10〜30%のコスト増となる可能性があります。

  2. 通関・配送の遅延リスク: 米国CBPはde minimis制度の乱用防止として、同一受取人・同一日配送への厳格な監視を導入。これにより、日本から発送される小包も検査対象となり、配送遅延の可能性が増します。

  3. 顧客体験の低下: 米国の購入者が受取時に追加の関税や手数料を求められるケースが増え、「想定外のコスト」によるカゴ落ちや返品リスクが高まります。

 

日本企業が取るべき実践的対応策

  1. 米国内倉庫(3PL)の活用: FBAまたはFBMといったAmazon内の物流サービス、または独自倉庫を活用し、米国内での配送に切り替えることで、関税や遅延の影響を回避できます。

  2. マルチチャネル対応と市場分散: 依存度の高い米国市場に加えて、東南アジア・中東・欧州等への多拠点展開を進め、リスク分散を図るべきです。

  3. 税前・税込価格表示の最適化: 商品ページに「関税・送料込み(DDP)」を明記することで、消費者側の不安を軽減し、CVR(購入率)の低下を防ぎます。

  4. 米国CBPのデータ要件対応: HSコード、正確な商品名、価格、原産地情報を含む正確な通関データを準備し、システム連携により通関スピードの向上を図るべきです。

 

マーケティングと情報発信の工夫

  • ECサイトやSNSで価格変動の背景を丁寧に説明する「ストーリーマーケティング」導入

  • 「なぜ値上げ?」に対するFAQの設置と、チャットボット等による迅速な対応体制の構築

  • ニュースレターでの関税制度変更に関する事前通知や割引キャンペーン実施

 

ビッグ・ビューティフル・ビル法案は、制度面だけでなく、物流・販売・カスタマーサポートまで多面的な変化を引き起こします。日本のEC事業者にとっては試練の時期ですが、いま動けばチャンスにも変えられるはず。800ドル免税制度終了の「2027年7月」を一つの転換点と捉え、今こそ越境EC戦略の再設計に踏み出すべき時です。

参考リンク:

ビッグ・ビューティフル・ビル法案(One Big Beautiful Bill):

https://www.whitehouse.gov/obbb/