August 13, 2025
米国税務の強化:Amazon FBAセラーに新たな課税リスク
越境ECの急成長に伴い、各国政府は税務コンプライアンスへの監視を強化しています。最近、米国国税庁(IRS)はAmazon FBA(Fulfillment by Amazon)倉庫を利用する海外セラーに対して、より厳格な課税認定と申告義務を明確化し、業界に大きな注目を集めています。
これは全く新しい法律ではありませんが、トランプ政権の「税収増加と抜け道封じ」という方針の下で、税務調査・遡及課税・徴収の強化は確実に進んでいます。米国や欧州でFBAを利用するセラーにとって、各地域の税務責任を理解することは、越境EC運営の必須条件となっています。
米国FBAセラーの税務ポイント
- ECI(Effectively Connected Income)の認定と課税義務
IRSの最新ガイドラインによると、FBAで在庫を米国内に保管しているセラーは、米国で事業を行っている(U.S. Trade or Business、USTOB)と見なされ、その利益は「ECI(Effectively Connected Income)」として米国課税の対象となります。
海外法人の場合、Form 1120-Fによる利益申告が必要です。未申告の場合、IRSは売上総額(純利益ではない)に対して30%の源泉税を課す権限を持ち、過去年度分も遡及課税される可能性があります。 - Protective Filing(保護申告)
自分がECIに該当しないと考えていても、多くの会計士は「保護申告」として1120-Fを提出することを推奨しています。これにより、経費控除や税額控除の権利を保持できます。 - よくある誤解
- W-8BEN/W-8BEN-E ≠ 免税:あくまで身元証明であり、ECI判定には影響しません。
- 1099-Kを受け取らなかった=安全ではない:IRSは通関や銀行送金などのデータから売上を把握できます。
- 米国にオフィスがなければ課税されない?:在庫が米国にあるだけで課税対象となる可能性があります。
- 実務的アドバイス
米国での在庫分布や売上額を定期的に確認し、申告義務の有無を判断しましょう。越境ECに精通した米国CPAに依頼し、申告期限・必要書類・節税戦略を確実に管理することが重要です。また、多国販売の場合は二重課税を回避するための租税条約活用も検討が必要です。
新法ではないが監視は強化されている
FBAセラーの納税義務は新しいものではなく、米国IRSや欧州各国税務当局が法令で以前から定めています。しかし、トランプ政権下では以下のような執行強化が顕著です:
- 税務調査の頻度増加:越境プラットフォームや第三者倉庫のデータを突合。
- 国際的な情報交換:税務当局間で海外セラーの売上データを共有。
- 過去年度分の遡及課税:未申告案件に対し、遡及して課税・罰金を適用。
これにより、これまで「申告しない」リスクは大幅に上昇しています。
欧州FBAセラーの基礎税務
- VAT登録と申告
FBA在庫をEU加盟国(ドイツ、フランス、ポーランドなど)に保管する場合、その国でVAT登録を行い定期的に申告する必要があります。
Pan-EU FBAを利用すると在庫が複数国に自動的に分配され、複数国で同時に登録義務が発生することが一般的です。 - OSSと現地申告
Union OSSは国境を越えるB2C販売の申告を一元化できますが、在庫がある国での現地申告義務はなくなりません。現地販売や在庫移動は各国での申告が必要です。 - EPR(拡大生産者責任)
ドイツやフランスなどでは、梱包材や電子機器、電池などに関してEPR登録と報告が義務付けられており、未登録の場合はプラットフォームからの出品停止もあり得ます。
まとめ:越境EC運営者の必須コンプライアンス
米国や欧州でFBAを利用している限り、その国の税務ルールに従う必要があります。
- 米国ではECIとForm 1120-Fの理解が必須。
- 欧州では複数国VATとEPR義務への対応が重要。
世界的に税務監視が強化される中、高額な追徴課税や罰金を回避するためにも、税務管理を日常業務に組み込み、長期的に安定した事業運営を実現することが不可欠です。
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